民主政治について...その1

 民主政治について,今一度考えてみたいと思い,19世紀のフランス政治家のトクヴィルの著書を読んだ。二巻かつそれぞれ上下巻となっており計4冊になる大ボリュームだったが非常に有意義な内容だった。 

 この著書は,1830年頃にアメリカを訪れたトクヴィルが,そこで行われている民主政治について,フランスやイギリスとの違いや民主政治の行く末などについて書かれている。タイトルからすると,アメリカの民主政治は素晴らしいものであると持て囃す内容であると思ってしまうが全くそうではない。この著書の中でトクヴィルは,人々が平等と自由を実現するためには民主政治が必要であり,階級制度が存在する専制政治ではその実現は難しいと述べている。しかし民主政治自体に全幅の信頼を寄せているわけではなく,どちらかというと民主政治に内在する危険性と嫌々付き合っていくしか無いという風に書かれている。
 その中で特に面白と思ったのは,平等をもとめる民主政治の国民は皆忙しくなるという指摘である。トクヴィルは,訪れた当時のアメリカは,それまでに見たことが無いまでに皆が忙しくしている国であると言っている(今の日本人からするとそうでもないけど…)。忙しくなる理由として,階級制度が存在する社会においては,一位を目指そうとするよりもその身分を維持するまたは少し上に上がるだけで満足できるが,皆が平等な民主政治な国では認識出る階級は存在しないので常に自分が下にいるのではないか?という危機感を覚えその状態に満足できないからであるとトクヴィルは言っている。これをみて私が思ったのは現在はむしろ資産という価値観で階級制度ができているのでは?と思った。お金という単位(日本だと1円単位)で,人々を階級分けするならばほぼ無段階での階級制度であり,自分の周りの人が持つ資産を大まかに予想することができるが目に見えて認識することはできないので,常に自分が下にいるのではないか?という危機感を覚え,現代社会の人々が忙しくしていると思うと現代の日本はそういう意味では民主政治が進んだ国になってしまったのではでしょうか?とりあえず今回はここでお開きです。

 次回もまたトクヴィルネタです。